DVはドメスティック・バイオレンス(domestic violence)の略で、内縁関係を含め夫婦間で起こる家庭内暴力を言います。平成29年度の内閣府調査によれば、女性の31.3%が配偶者からのDV被害経験があると回答。もはや他人事ではありません。
暴行罪や傷害罪、強姦罪etc。DVで問われる罪とは?
「DV法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)」が施行されたのは2001年。この法律の前文には「配偶者からの暴力は、犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害である」と明記されていることからも分かるように、DVはれっきとした犯罪行為なのです。
夫婦喧嘩の一種じゃないの?大げさな……と思う人もいるかもしれませんが、一方的に延々と継続する暴力は夫婦喧嘩の範疇を超えています。
ここで、DV法の定義を見ておきましょう。
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(配偶者暴力防止法)
(定義)
第一条 この法律において「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項及び第二十八条の二において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。
2 この法律において「被害者」とは、配偶者からの暴力を受けた者をいう。
3 この法律にいう「配偶者」には、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含み、「離婚」には、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者が、事実上離婚したと同様の事情に入ることを含むものとする。
また、第29条にて、保護命令に違反した場合の罰則が記載されています。
第二十九条 保護命令(前条において読み替えて準用する第十条第一項から第四項までの規定によるものを含む。次条において同じ。)に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第29条の保護命令違反罪に加えて、刑法で定められた犯罪によって処罰されます。例えば、暴行罪や傷害罪、強姦罪、強制わいせつ罪などです。下記に、DVで逮捕された事例を掲載しておきます。
殴る&蹴るだけがDVではない!4つのDVを知ろう
DVには、身体的な暴力を含め4つの種類があります。「殴る&蹴る」は、誰もがDVと認識していると思いますが、他の3つの行為も紛れもないDV。身体的暴力を受けていないとしても、下記いずれかに該当すればDV被害者です。
身体的暴力
殴る&蹴るをはじめ、首を絞める、髪を引っ張る、体を引きずるなど身体への暴行が挙げられます。物を投げたり、ナイフやカッターで切りつけることも当然、DVです。身体的なDVは放っておくとエスカレートする場合も多いので、命の危険を感じたら我慢をせずにすぐに相談してください。
精神的暴力
「モラハラ」と言った方が分かりやすいかもしれませんね。相手の性格や人格などを全否定して「お前はダメな人間だ」と罵倒します。他には、大声で怒鳴る、命令口調、土下座の強要など言葉の暴力と侮辱を毎日繰り返すので、被害者は「自分はこの人がいないと生きていけないダメ人間なんだ」と洗脳状態に陥ります。
性的暴力
例え結婚をしていても、パートナーが嫌がる中での性行為もDVです。アブノーマルだったり怪我をしてしまうような性的プレイを強要するのはもちろんのこと、妻が避妊を望んでいるにも関わらず対処しないのも、中絶の強要も性的なDVです。夫婦だから許されるというものではありません。
経済的暴力
金銭的な部分で相手を締め付ける行為です。生活費を渡さない、家計のやりくりに文句ばかりを言う、その一方で自分は浪費をする……など。美容院や化粧品などの身だしなみや、友達とのランチなどにもケチをつけて「自分の分は自分で払え」と言ったり、子供に必要な費用すら支払わないタイプもいます。
DV被害者がDVから逃げ出せない理由
DVにはサイクルがあって、ストレスを溜めこむ「蓄積期」、ストレスが一気に噴き出す「爆発期」、ストレス発散後の「ハネムーン期」を繰り返します。
DV夫が散々暴力をふるった後「ごめん、そんなつもりじゃなかった。本当に悪かった」「もう2度と暴力は振るわない!約束する」と涙を流して謝り、プレゼントを買ってきてくれたりと、それまでが嘘のように優しくしてくれることがあると思いますが、これがハネムーン期です。
そして、優しかったのも束の間、また突如暴力をふるう……の繰り返しです。
DV被害者である妻は、ハネムーン期の優しい夫の姿を見て「この人は、本当は優しい人なんだ」と感じます。
もちろん好きになった相手ですし、酷い仕打ちを受けていたとしても「私はDV被害者なんだ」と認めることは、自分が選んだ相手や自分自身を否定することに繋がりますからね。
はたからみれば普通ではないので、友人などから「そんな旦那、絶対変!普通はそうじゃないよ」「逃げた方が良いよ!と忠告されることもありますが、何しろ本人自身が「おかしい」と思えなくなっています。
理不尽に殴られて罵られても「根はやさしい人なんだよ」「私にも悪いところがあったからダメなの」「この人がいないと生きられない」と我慢をして、深みから抜け出せないままDV夫に怯えて暮らし続ける羽目になります。
冒頭で述べたようにDVは犯罪です。我慢をする必要はないのです。
DVチェックリスト
DV被害者であればあるほど「夫の行為はDVではない。自分が悪いだけ」と思い込んでしまいがち。
DVから抜け出す第一歩は、自分がDV被害者であることを認識することです。このDVチェックリストで、あなたが該当する箇所はいくつありますか?該当する箇所が多いほどDVの疑いが強くなりますが、少なければ安心というわけでもありません。
身体的な暴力
- 蹴る・殴る
- 顔や身体を壁などに、強く押しつける。
- 首をしめる(しめようとする)。
- 髪の毛をひっぱったり、髪の毛をつかんで引き摺りまわす。
- タバコの火を押しつけるなど、火傷させる。
- バット、ゴルフクラブ、ベルトなどで殴る。
- 水に(被害者の)顔を突っ込んだり、口をふさぐ。
- 腕を掴んで捻じあげる。
- 包丁などを突きつける。包丁などで切られた。
- 殴るそぶりや、ものを投げるそぶりをして脅す。
精神的暴力
- 「お前はなにもできない」「お前は役に立たない」などと侮蔑する。
- 身体や性格や考え方などを責め立てる。
- 手をついて謝らせたり、土下座させる。
- 実家や友人とのつきあいをなんくせをつけてやめさせようとしたり、禁止する。
- 「お前を愛しているから心配なんだ」などと言い訳をして、外出させない。
- 「子どもに問題があるのは、母親であるお前のせいだ」などと責める。
- 家事や子育ては女の仕事だと決めつける。
性的暴力
- 病気で辛いときなどに、被害者の気持ちを無視して、一方的にセックスする。
- 暴力的な(殴る、ねじ伏せる、縛るなど)セックスを強要する。
- 無理に性器具や異物をつかって、セックスをさせる。
- 「ただで出来る」などと、物として扱うようなことを言ったり態度をとる。
- 「子どもができないのは、お前のせいだ」などと非難する。
- 避妊に協力しない。
- 中絶を強要する/強要された。
経済的暴力
- 「誰に食わせてもらっているんだ」などと怒鳴る。
- 生活費を渡さない。
- 週に数千円または月に数千円など、少額しか生活費を渡さないで、惨めな気持ちにさせる。
- 家計の管理を独占して、お金を何に使ったのか細かく報告させる。
- (夫の)給料がいくらなのか、貯金があるのかないのか教えない。
参考文献 「ドメスティック・バイオレンス サバイバーのためのハンドブック」
原田恵理子編著・明石書店
まずは、自分の置かれている現状をきちんと認識して、DVを抜け出さなくちゃ!と強く思うことが大切です。