ぎくしゃくした夫婦関係を修復するために、家庭裁判所の調停を利用することもできます。
調停委員が仲介役となって夫婦それぞれの主張を聞いたうえで改善のための提案やアドバイスをしてもらうもので、夫婦関係円満調停といいます。
調停委員の仲介で冷静に話ができる
パートナーの浮気を許して夫婦関係の再構築を試みる場合、気持ちの整理がうまくつけられずにイライラしたり、浮気時の辛い記憶がフラッシュバックするなど、思ったよりもうまく進まないことが多いと思います。
これは、ある意味仕方がないことですよね。すべてを忘れてパートナーの浮気前のように振る舞えと言っても、神様や仙人ではないんだから、すぐには無理ですし時間はかかります。
浮気した側のパートナーだって、生まれ変わろうとしている中で浮気時のことをチクチク持ち出されては良い気はしません。そんな状況を長らく続けていては、お互いへの不満が積もるばかりで、再構築どころではなくなってしまいます。
こんなときに利用したいのが、夫婦関係円満調停。お互い面と向かって話をすると冷静になれず、収拾がつかない場合におすすめな方法です。
調停といっても費用は数千円で済みますし、有識者が仲介に入るのもポイント。現在婚姻中で、夫婦関係を修復する気持ちがあれば誰でも利用できます。夫婦間でうまく折り合いがつけられないのなら、第三者の目で客観的にアドバイスを受けたほうが、結構すんなり納得できたりするものなのです。
夫婦関係円満調停の申立てをする
円満調停の申立ては難しくないので、弁護士に依頼せず自分でも手続きが可能です。まずは必要な書類を準備しましょう。
円満調停申立てに必要な書類
申立書などは家庭裁判所ごとに書式が決まっています。
各家庭裁判所のホームページからダウンロードもできますが、二度手間にならないように、念のため問い合わせておくのがおすすめ。子についての事情説明書は、未成年の子供がいる場合にのみ必要です。
- 申立書:3通(裁判所用&パートナー用のコピー、自分用の控え)
- 非開示の申立書:1通
- 事情説明書:1通
- 子についての事情説明書:1通
- 進行に関する照会回答書:1通
- 連絡先等の届出書:1通
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明):1通
基本的には、7つの書類を用意すればOKなのですが、場合によっては自分の主張を裏付けする資料の提出が必要になることも。また、それぞれの書類は提出すると返却されないので、必ず控えをコピーしておくようにしてください。
円満調停申立てに必要な費用
費用はさほどかかりません。申立て時に必要なのは、下記金額の印紙と切手のみです。
- 収入印紙:1,200円
- 連絡用切手:100円2枚、82円8枚、10円14枚、1円10枚(合計1,006円)
円満調停の申立て先
基本的には、相手方=パートナーが住んでいる地域を管轄している家庭裁判所に調停を申立てます。
再構築中であれば、大抵は同居をしているでしょうから、自宅を管轄している家庭裁判所に申立ててください。別居していればパートナーの居住先になります。
全国の家庭裁判所は下記を参照してください。
円満調停の申立て方法
申立書は郵送でも提出できますが、不備があると家庭裁判所と何度も郵送で書類のやりとりをするハメになります。頻繁に作成機会がある書類ではないので、記載ミスや漏れは十分に考えられますよね。それを考えれば、忙しくても家庭裁判所に直接出向いて受け付けてもらったほうが、かえって時間がかからなかったりしますよ。
家庭裁判所に出かける際は、印鑑や筆記用具を忘れずに。訂正箇所や記載漏れがあっても、その場で対応できます。
円満調停の流れ
夫婦円満調停は平日に月1ペースで行われ、所要時間は1回につきおよそ2時間ほど。
調停期日の開始日と終了日は、手続きなどの説明を受けるためパートナーと一緒に調停室に入る必要がありますが、それ以外は待合室も聴取も別々なので安心。お互いに遠慮することなく存分に本音を語れます。
調停期日当日は、パートナーと交互に調停室に入り調停委員による聴取が行われます。聴取……と言うと、あまり良いイメージを持たないかと思いますが、調停委員から事情や状況のヒアリングを受けるだけです。
聴取を受ける項目は、主に下記。
- どうして円満ではなくなったの?
- パートナーへの不満は何?
- 相手に何がしてあげられるの?
- どうすれば上手くいくと思う?
- 今後どうしていきたい?
調停委員に事実や気持ちをきちんと伝えられるよう、シミュレーションしておきましょう。
調停委員は夫婦両方の言い分を聞いて、中立の立場で夫婦関係修復のアドバイスをしてくれます。男女それぞれ一人ずついるので、考え方がどちらかの性別に偏ることはありません。
経験豊富な有識者が専任されているだけに、夫婦ふたりだけ&友達などに仲介を依頼して話し合いをするよりも冷静になれるし、意見を素直に受け止められるのが最大のポイントですね。話し合いをする場所が、家庭裁判所内というのも大きいかも知れません。
調停委員がサジを投げることはまずありません。夫婦ふたりが納得するまで解決策を提示してくれます。今後の生活のための約束事や努力目標などを決めることも多いようです。
夫婦間の考え方があまりにも違っている場合……例えば、自分は再構築できるよう努力しようと思っていたのに、パートナーの気持ちが離婚に大きく傾いていたなどだと、二回目の期日で調停が不成立になることもあります。
調停成立と注意点
調停での話し合いにお互い納得できたら、合意内容を記載した調停調書を作成します。調停調書の内容は裁判官立ち合いのもと、夫婦双方で間違いがないかを確認することになります。あとは、お互いに約束事を意識して、夫婦関係修復に向けて努力を続けていくだけです。
もし、調停調書に記された合意内容をパートナーが守らなかったら?
家庭裁判所から履行勧告を出してもらうか、再度調停を申し立てるかのいずれかになります。
もちろん、もう一度円満調停をやりなおすのも良いのですが、わざわざ調書にまでした決め事を簡単に破るようなパートナーと、果たしてやり直せるかどうかですよね。もう無理だなと思ったら、今度は離婚調停を申し立てるのもありです。
何しろ、円満調停での決め事は金銭面以外での強制力はありません。守るか守らないかは、お互いの気持ち次第。本気で再構築するつもりなら、意識的に改善努力をするでしょう。「強制力がないなら、約束なんて守らない」なんて考え方のパートナーとやり直すことは無理ですものね。
円満調停前にしておくこと
夫婦円満調停はいつでも申立てをすることができますが、ろくに夫婦間での話し合いもせず、いきなり家庭裁判所任せというのは絶対にNG。パートナーを目の前にすると、浮気のことを思い出してなかなか冷静に話ができないかもしれませんが、まずはふたりで今後の生活をやり直すためにどうすべきか話をしてみることが大切です。
話し合いが不調に終わったら、夫婦円満調停を検討しましょう。
その場合も、パートナーには事前に「再構築がしたいから、夫婦円満調停をしようと思う」と伝えてください。申立てをすると、家庭裁判所からパートナー宛に夫婦関係調整調停の呼び出し状が届きます。これは、手続き上法律で定められているので、避けることはできません。事情を知らないまま、急に裁判所から呼び出し状が届いたら、誰でも平静ではいられませんよね。
最悪、離婚調停と勘違いされてパートナーが離婚を決意してしまう可能性だってあります。